不動産向融資及び投資額

日銀によると、不動産融資向け平成28年10~12月期の銀行による新規貸出額は、前年同期比+9.7%の2兆6416億円に達し、平成28年通期でみれば同+15.2%の12兆2806億円で、年間としてはバブル期を超え過去最高を更新しています。信用金庫は、同8.7%の2兆4357億円。全体の新規貸出額は同10.4%の48兆3988億円と、不動産向けが1/4を占めていることとなり、マイナス金利導入後、運用難に陥った資金が不動産市場に流入している格好が浮き彫りとなっています。尚、平成28年12月末の不動産向け貸出残高は70兆3592億円に達し過去最高を記録しています。新聞報道によれば、金融庁や日銀は、少し警戒のレベルを引き上げていると報道しています。
一方、都市未来総合研究所の調査による不動産売買額(上場企業やJ-REIT等が開示・公表した国内不動産の売買取引額)は、平成28年は4兆131億円の前年比△7.4%と2年連続のマイナスとなっています。同研究所では、投資対象物件の市場流通が品薄なことに加えて、投資利回りが低下(価格は上昇)していることから更なる高値は追いにくく、取引の市場規模は縮小になったとみています。
また、JLLの調査によるH28年商業用不動産投資額は、前年比約11%減の3兆6700億円となっています。そのうち、海外投資家による投資額は同△41%の5300億円となり、全体投資額に占める割合は14%(前年22%)となっています。JLLでは、物件の市場供給が限定的な状況を背景に、物件供給のパイプを持たない海外投資家による新規物件取得は厳しい状況が年間を通して明らかになっているとしています。
これらの報道及び調査結果から見えてくることとしては、マイナス金利導入後、不動産市場に大量の資金が流入している状況下、J-REIT等の比較的大規模な投資法人又は大企業等が求める投資物件(一般的には土地建物の複合不動産)は、品薄感が強いなか、2番手以降の需要者は、積極的な取引を行っている状況が窺えます。特に、現実の市場では、購入者サイドからみれば根拠はあるのですが、第三者が一見しただけでは、特殊な経営能力を駆使しないと採算性に疑義がある高値取引や、将来に対する過度の期待感から買い進まれる事例等も散見されつつあります。
収益物件を保有してインカムで採算ベースに乗る収益を上げていれば、取引市場において大きな問題は無いのですが、バブル期で見受けられたように、短期間での転売事例等が現れ始めれば要警戒以上と言っていいかもしれません。金融庁や日銀が監視を強めているのは、主にアパートローンの急拡大(賃貸物件の供給過剰感、空室率の増加等)でありますが、新聞報道等を含め金融庁及び日銀のメッセージが、今後の不動産市場にどのような影響を与えるか、注視が必要です。